尖った牙でペンギンを襲うヒョウアザラシ。
かなり獰猛なイメージがありますが、実は人間とのトラブルもありました。
今回はそんなヒョウアザラシの実態について紹介します。

結論…人を襲った事例はある

みなさんのイメージ通り、実はヒョウアザラシによる死亡事故は確かにあります。

この大きな口で襲われたらひとたまりもなさそう、、、。



2003年に南極海でシュノーケリングをしながら調査を行っていた海洋学者が、海中に引きずり込まれて死亡する事故が起こっています。
これはヒョウアザラシによる唯一の死亡事故となっており、当時大きなニュースにもなりました。
ではヒョウアザラシは好んで人間を襲っているのか?その可能性は低いでしょう、次で詳しく紹介していきます。

そもそもヒョウアザラシは哺乳類以外も捕食する、プランクトンすら食べている。

まずヒョウアザラシの食性について紹介しましょう。
彼らはひれあし類の中でも特殊な食生活をしていて、動物プランクトンから大型の生物までさまざまな生物をエサにしています。

南極に生息するカニクイアザラシ、彼らもヒョウアザラシのエサになる。


ヒョウアザラシの尖った歯はまるでアザラシやペンギンの肉を断つ刃物に見えますが、よく見るとヒゲクジラのヒゲ板のように小さなものを漉しとれる構造にもなっています。

ヒョウアザラシの頭骨、犬歯以外の歯が特徴的な形になっている。


このギザギザした歯の形は南極に住むアザラシに見られる特徴の一つで、南極生態系の中で最も生物量の多い「ナンキョクオキアミ」を漉しとって食べるための物です。

体長が数センチしかないナンキョクオキアミは南極の生態を支える重要生物だ。


もちろんこの尖った歯を利用して肉も食べることができますが、そもそも彼らは利用しやすい食べ物を幅広く利用できる柔軟性のあるアザラシなのです。

そもそも南極には本来人が住んでいないため、クマのようにいわゆる「味を占める」ことはありません。
2003年の死亡事故の原因は解明されていませんが、人を食べるために襲ったとは考えにくいでしょう。
ですが、南極海を小型ボートで移動中にヒョウアザラシに追いかけられたり、船にアタックをされた事例はあります。
ヒョウアザラシにとっては見たこともない船や人に好奇心(警戒心?)を与えたことで、彼らが接近するのだと考えられます。

変わった姿をしているヒョウアザラシだが、彼らからすれば人の方が変わっているだろう。

アザラシはヒトを襲わないのか?

世界中の水族館、動物園でアザラシが飼育されています(過去にはヒョウアザラシも飼育されてました)が、彼らは飼育員を攻撃することはないのでしょうか?

ヒョウアザラシの飼育経験のあるタロンガ動物園では特にトレーナーが襲われたなどの報告はありませんでした。
では他のアザラシは?そもそもこういった情報はあまり公表されないので正確な数字で出すことはできませんが、アザラシに威嚇された、追いかけられた話は飼育業界ではよく聞く話です。

水族館でおなじみのゴマフアザラシもよく見ると牙がある。噛まれると大けがもする。


でもそれは、
・野生のアザラシを(衰弱などの理由で)保護しようと思ったら威嚇された
・赤ちゃんの健康チェックのため飼育場に入ったら母親アザラシに追いかけられた
・普段とは違う服装で飼育場に入ったらアザラシに威嚇された
など「そりゃあ怒るよな」とみなさんも思いそうな理由がほとんどです。

ゼニガタアザラシの母親(右)と幼獣(左)。授乳期間中は母親は子に寄り添い守っている。


アザラシ達は野生動物で、人に可愛がられたり、撫でられることが本能的に好きな生き物ではありません。
なのでいきなり驚かせたりすると彼らも警戒するのは当然のことなのです。

北海道の稚内で出会った野生のゴマフアザラシ、こちらをじっと見ている。

今回の結論としては…

「ヒョウアザラシじゃなくても怒る時は怒る」ということになりますね!
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