作成日:2025/4/6 更新日:2025/4/6

英名Japanese sea lion
学名Zalophus japonicus
分類アシカ科カリフォルニアアシカ属
分布日本周辺?
大きさオス:230-250cm, 450-560kg
メス:160cm

ニホンアシカとは?

ニホンアシカはかつて日本近海に分布したアシカです。毛皮や油を目的に明治時代に乱獲され、1974年の目撃を最後に絶滅しました。
(厳密には環境省のレッドデータでは「絶滅」にはなっていませんが、IUCNや国内各県で「絶滅」表記になっていることや本種の寿命を考えて本記事では「絶滅」と表記します。最後の目撃例から50年が経過するため、恐らく数年以内に環境省でも絶滅宣言が出されると思われます。)
十分な研究が行われることなく絶滅してしまったため、その生態は謎に包まれています。
その姿をはく製で見ることができるものの、その数や状態にはかぎりがあり、特に成熟したオスのはく製は世界中で1体しかありません。

世界で1体しかない、成獣オスのニホンアシカのはく製。




分布・回遊

ニホンアシカは日本近海に生息していたと考えられています。(3)

二ホンアシカの分布。Melin et al., (2015)を参考に作成。



島根県や青森県など国内の複数個所で繁殖していた記録があります。
日本で見られるアシカの仲間にはキタオットセイやトドもいますが、この2種と違い大規模な季節回遊はしていなかったと考えられています。
1975年に島根県の竹島で目撃されたのを最後に絶滅しました。(4)

島根県の竹島は国内でも有数の繁殖地だったと考えられている。




食性

イカやタコ、魚類を食べていたと考えられています。近縁種のカリフォルニアアシカは季節や海域によって利用するエサを変える「日和見食性」であることから二ホンアシカも柔軟に利用するエサを変えていた可能性があります。
しかし詳細な研究資料はありません。

ニホンアシカの頭骨。一番左が成獣オスのもので、近縁種のカリフォルニアアシカよりも頭頂部の出っ張りが目立つ。



人間との関わり

縄文時代の貝塚からアシカの骨が出土されていることからも古くから狩猟が行われていたと考えられています。(3)
商業的な狩猟が行われたのは1900年頃からで、島根県では当時の記録が多く残されています。(5)
最初は1897~1898年に漁民が竹島に生息するニホンアシカを50頭ほど持ち帰り利益を得たのが始まりだったそうです。
狩猟会社が設立され、1904年には竹島だけで2000頭以上のアシカが捕獲されました。
捕獲されたアシカは毛皮や油として加工、販売されるほか、動物園やサーカスに生きたまま売られました。

子育て中のメスや、そのコドモも捕獲されていた。


特に体の大きくなるオスは毛皮としての価値が高かったため、集中的に捕獲されたと考えられています。

1910年(商業狩猟開始からわずか5年ほど)で捕獲頭数は1000頭を下回るようになり、1920年代に入ってからは約100頭にまで減少しています。
1957年以降アシカはほとんど姿を見せなくなったそうですが、ここまでの間に16,500頭以上のアシカが捕獲されました。

ニホンアシカはほとんど回遊をせず、また繁殖期には成熟した個体が一堂に集まって交尾・子育てをします。
当時のアシカ猟は、二ホンアシカの大規模な繁殖地でまさに繁殖期である夏に行われていました。
さらに繁殖ができる大型のオスを集中して捕獲したことでの個体群のバランスの乱れました。
このように生活史を考慮しない無秩序な捕獲により、ニホンアシカは絶滅しました。

さらに不幸なことに、多くのニホンアシカが捕獲されたにも関わらずその生態研究はおろか標本作製も適切に行われなかったため、世界中でもニホンアシカのはく製は十数体しか残されていません。



ニホンアシカのはく製についてもっと知りたい方はこちらもチェック↓

ニホンアシカに会える動物園・水族館

現在ニホンアシカに会える施設は日本も含め世界中でありません。

【過去に展示していた可能性のある施設】
・名古屋教育水族館(閉館)
・東山動物園
・京都市紀念動物園(現・京都市動物園)
・天王寺動物園
・境水族館(閉館)
・阪神パーク阪神水族館(閉館)
・神戸市諏訪山動物園(閉館)
・箱崎水族館(閉館)
・到津遊園(現・到津の森公園
・熊本動物園

他にも島根県庁の池で飼育された記録や、サーカスへ売却された記録がある。


【現在はく製を所有している施設】
・領土・主権展示館(1体、展示中)
・天王寺動物園(3体)
・大阪岸和田高校(2体)
・大阪府立岸和田高校(2体)
しまね海洋館アクアス(1体、展示はしていないが通路に保管されているのを確認)
三瓶自然館サヒメル(3体、展示中)
・島根大学(1体、展示中)
・九州大学(1体、一部期間のみ見学可能?)

・オランダ ナチュラリス生物多様性センター(3体)
・大英自然史博物館(1体)

他にも千葉県の木更津高校や大阪府茨木高校で保管されているアシカ科のはく製がニホンアシカである可能性が出てきています。


参考資料

1.Lowry, L. (2017). Zalophus japonicus. The IUCN Red List of Threatened Species 2017:
e.T41667A113089431.[Link]
2.Melin, S.R.; Trillmich, F.; Aurioles-Gamboa, D. California, Galapagos, and Japanese Sea Lions: Zalophus californianus, Z. wollebaeki, and Z. japonicus. In Encyclopedia of Marine Mammals; Elsevier: Amsterdam, The Netherlands, 2018; pp. 153–157. [Link]
3.伊藤徹魯, 中村一恵. (1994). ニホンアシカの復元にむけて-9-ニホンアシカの分布の復元. 海洋と生物= Aquabiology16(5), pp373-393.
4.井上貴央. (1995). ニホンアシカの復元にむけて-11-日本海竹島のニホンアシカー 2-捕獲頭数の変遷. 海洋と生物= Aquabiology17(1), p41-46.
5.井上貴央. (1994). ニホンアシカの復元にむけて-8-日本海竹島のニホンアシカー 1-アシカ猟の変遷. 海洋と生物= Aquabiology16(4), p317-321.