作成日:2026/08/26 更新日:2026/08/26

| 英名 | Grey seal |
| 学名 | Halichoerus grypus |
| 分類 | アザラシ科 ハイイロアザラシ属 |
| 分布 | 北太西洋~亜北極海 |
| 大きさ | オス:220cm, 220kg メス:180cm, 150kg |
ハイイロアザラシとは?
ハイイロアザラシは北太平洋に生息する中型のアザラシで、馬のような顔立ちが特徴です。

国内では3カ所の飼育施設でしか見ることができない珍しい種類です。
この記事では現役飼育員のももこんちょが、ハイイロアザラシの特徴、分布、食性、日本で出会える場所などを紹介します。
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ハイイロアザラシの特徴
名前の通り体が全体的に灰色で、黒色の斑紋模様があります。
この斑紋模様は個体によって出方が違っていて、オスは模様があまり目立ちません。
そしてもう一つの特徴が鼻づらが他のアザラシに比べて太く長くなっていて、馬面になっています。
オスのほうがより馬面の特徴がはっきり出るので、初めて見たひとは「本当にアザラシ?」と思うかもしれません。

体の大きさはメスで100kg程度に対し、オスは約300kgと、性別で明らかに大きさが違っています。
これはのちほど説明する繁殖に大きく関係している特徴です。
このように体の大きさと模様で他のアザラシとは簡単に見分けることができますね。
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生息地
ハイイロアザラシは大西洋の東西両側の海岸と、バルト海に生息しています。
それぞれの地域で独立した群れ(個体群)が存在していて、繁殖時期もそれぞれ違っています。

ゴマフアザラシのような回遊生活はせず、エサを探しに行くときに特に若い個体が数100~1000kmの移動をすることがありますが、基本的には繁殖地や休息地で過ごします。(3)
食性
ハイイロアザラシはタラやニシン、イカナゴなどさまざまな魚類を食べるほか、なんとネズミイルカや他のアザラシなども食べることが分かっています。(4)(5)
最近の研究では、一部の島で長年ハイイロアザラシの赤ちゃんの謎の大量死が起こっていましたが、それがオトナのハイイロアザラシのアザラシによる捕食であることが明らかになりました。(6)
ここまで読むと、「じゃあ凶暴で水族館でも肉をあげてるのかな?」というイメージを持つ人もいるかもしれませね。
でも実際は主食は魚で、あくまでそういった大型生物が食べられる時に利用しているそうです。
水族館で展示されているハイイロアザラシ達も、他のアザラシと同様に魚だけを食べています。

咀嚼はせず丸呑みする。
繁殖・子育て
ハイイロアザラシは秋~冬に繁殖期を迎えます。
1頭のオスが縄張りを持って複数のメスと交尾をします。
縄張りを持てるのは強いオスだけで、海岸ではオスたちが縄張り争いを行っています。
メス同士は基本的にケンカをしないので、オスだけが体が大きくなっているのはこの繁殖に向けた進化だといえます。

オスは縄張り奪われないように、繁殖期は飲まず食わずで海岸で過ごします。
先ほど、一部の個体が共食いをすると紹介をしましたが、これは海岸で絶食に耐えるオスのハイイロアザラシが、海岸で逃げられない赤ちゃんを非常食として利用していると考えられています。
メスは出産してから赤ちゃんが離乳するまではエサは食べずに過ごします。
年に1回の出産で生むのは1頭で、赤ちゃんは真っ白な体毛に覆われています。
子育てはいわゆるワンオペで、オスは一切手伝いません。
ハイイロアザラシの子育て期間は約2週間と短く、それまでに赤ちゃんの体重は急増します。
その秘訣は高カロリーの母乳で、なんと約50%が脂肪分というこってりミルクを出すことができます。(7)
人間との関わり
1900~1975年には現地では過剰な狩猟や海洋汚染で個体数が激減しました。(8)
その後積極的な保護活動で個体数が回復したそうですが、それに伴って現地では漁業被害(漁具を壊したり、中の魚を食べてしまうこと)が問題になっています。
漁具の改良などや計画的な捕獲などで被害の軽減を目指していますが、それでも保護活動との両立が今後の大きな課題になっています。(9)(10)
海岸で衰弱した個体は現地の施設で保護されることがあり、SNSでも話題になったオランダの「アザラシ幼稚園」ではハイイロアザラシやゼニガタアザラシが保護されています。
また、2006年に秋田県の河口でハイイロアザラシと思われる個体が出現したニュースがあります。
大西洋で暮らしているアザラシが日本まで来ることは非常に稀ですが、その見た目からハイイロアザラシの幼獣だと判断されたそうです。
ハイイロアザラシは日本で会える?
野生のハイイロアザラシを国内で見ることはできないため、出会うなら飼育施設だけになります。

国内3カ所の飼育施設だけで展示されていますが、個体数が少なくて、海外から新しい個体が来るのも難しいためぜひ今のうちに会いに行ってほしい種類です!
どうしてひれあし類の数は減っているの?詳しくはこちら⇓
ハイイロアザラシに会える動物園・水族館
〇東海
鳥羽水族館
〇九州
大分マリーンパレス水族館うみたまご
参考資料
1.King, J. E. (1983). Seals of the World.(Second Edition) Cornell University Press, Ithaca, New York. 240 pp.
2.Jefferson, T. A., Webber, M. A., & Pitman, R. L. (2015). Pinnipeds. Marine Mammals of the World, 2nd ed.; Jefferson, TA, Webber, MA, Pitman, RL, Eds, 358-522.[Link]
3.Breed, G. A., Jonsen, I. D., Myers, R. A., Bowen, W. D., & Leonard, M. L. (2009). Sex‐specific, seasonal foraging tactics of adult grey seals (Halichoerus grypus) revealed by state–space analysis. Ecology, 90(11), 3209-3221. [Link]
4.Keszka, S., Panicz, R., Stepanowska, K., Biernaczyk, M., Wrzecionkowski, K., & Zybała, M. (2020). Characteristics of the grey seal (Halichoerus grypus) diet in the Vistula River mouth (Mewia Łacha Nature Reserve, southern Baltic Sea), based on the osteological and molecular studies of scat samples. Oceanologia, 62(3), 387-394.[Link]
5.van Neer, A., Jensen, L. F., & Siebert, U. (2015). Grey seal (Halichoerus grypus) predation on harbour seals (Phoca vitulina) on the island of Helgoland, Germany. Journal of Sea Research, 97, 1-4.[Link]
6.Langley, I., Lidgard, D., Varkey, P., Sanchez, M., Rivard, M., & Den Heyer, C. E. (2026). Gray seal cannibalism at the largest colony in the world, Sable Island. Marine Mammal Science, 42(2), 1-6.[Link]
7.Baker, J. R. (1990). Grey seal (Halichoerus grypus) milk composition and its variation over lactation. British Veterinary Journal, 146(3), 233-238.[Link]
8.Harding, K. C., & Härkönen, T. J. (1999). Development in the Baltic grey seal (Halichoerus grypus) and ringed seal (Phoca hispida) populations during the 20th century. Ambio, 619-627.[Link]
9.Suuronen, P., Lunneryd, S. G., Königson, S., Coelho, N. F., Waldo, Å., Eriksson, V., … & Vetemaa, M. (2023). Reassessing the management criteria of growing seal populations: The case of Baltic grey seal and coastal fishery. Marine Policy, 155, 105684.[Link]
10.North Atlantic Marine Mammal Commission (NAMMCO). (2016a). Report of the 23rd Scientific Committee Meeting, Nuuk, Greenland.[Link]


