国内の水族館や動物園では13種類のアシカやアザラシ、セイウチを見ることができます(2025年11月時点)。
しかし中には近い将来その姿を見られなくなる可能性があることを知ってましたか?
その理由や種類をしっかりと知って、今のうちにその目に焼き付けておきましょう。
それでは紹介していきます!
なぜ展示されなくなってしまうのか?
そもそも飼育個体がいなくなる理由としては以下のことがあげられます。
〇野生や海外の施設から新しい個体が入ってこない
〇国内での飼育数が少ない
〇繁殖がうまくいかない
国内で飼育されているひれあし類の約半数の種類が、もともと海外に生息している動物たちです。

これまでは、国際交流の一環として他の国から寄贈されたり、業者を通して現地で保護・捕獲された個体が日本にやってきていました。
しかし近年では、絶滅の危険がある種類の捕獲が禁止されたり、「自分の国の生きものを国外に出さないようにしよう」という動きが広がっています。
もちろん、自然の環境に悪い影響を与えるような捕獲は、絶対にしてはいけません。
ただ、その流れによって新しい個体(=新しい血統)が日本に入ってこなくなっているのが現状です。
例えばキタゾウアザラシやミナミゾウアザラシ、オーストラリアアシカは過去に国内の施設で見ることができましたが、新しい個体が入ってくることはほぼないため今後見ることは難しいです。

現在残っている種類については、全国の水族館や動物園が協力し合い、個体を移動させながら繁殖を進めています。
国内での飼育個体数が少ない
1つ目の理由によって海外から新しい個体が入ってこないとなると、今いる動物たちで繁殖を進めていくしかありません。
しかし、もともとの個体数が少ない場合、すでに高齢で繁殖が難しかったり、オスとメスの数のバランスが合わず、ペアが作れないこともあります。
たとえば「カスピカイアザラシ」は、現在では千葉県の鴨川シーワールド(バックヤード)でしか飼育されていません。
その子たちも高齢のため、繁殖は難しく、このまま日本では見られなくなってしまうかもしれません。

繁殖がうまくいかない
ひれあし類は、基本的に年に1回しか出産・子育てをしません。
セイウチのように、数年に1回しか赤ちゃんを産まない種類もいます。

せっかくペアができても、必ず無事に赤ちゃんが生まれるわけではありません。
妊娠中や出産時に亡くなってしまうこともあります。
過去には、三重県の伊勢シーパラダイスでカリフォルニアアシカの赤ちゃんが仮死状態で生まれたことがありました。
そのときは飼育スタッフさんの必死の対応で蘇生することができましたが、いつも同じようにうまくいくとは限りません。
私自身、現役の飼育員として、過去に苦い経験をしたことがあります。
ひれあし類の繁殖は、まだまだ研究や経験を積み重ねている段階です。
これからも少しずつ知識と技術を重ね、繁殖の実績を増やしていくことが大切だと思っています。
「今」会いに行けうちに
いかがだったでしょうか?
水族館や動物園で当たり前のように会えるひれあし類たちも、実はこの先、見られなくなってしまう可能性があります。
私自身、飼育に関わる立場として、これからも皆さんと一緒に、ひれあし類に会える環境を守っていきたいと思っています。
そして、今いる子たちには、ぜひ「会えるときに会いに行って」もらえたら嬉しいです。

「推しは推せるときに推す!」——まさにその気持ちで、水族館にも足を運んでみてくださいね。
