命の繋がりを感じる「環境水族館」

今回紹介するのは、福島県いわき市にあるアクアマリンふくしまです。

アクアマリンふくしまの外観。ドーム型の屋根が特徴的な水族館で、館内には自然光が降り注ぐ。
アクアマリンふくしまの外観。ドーム型の屋根が特徴的な水族館で、館内には自然光が降り注ぐ。

アクアマリンふくしまは福島の海の大きな特徴である太平洋の「潮目」をテーマに、水生生物の生息環境を再現した展示により、環境保全の大切さを伝える環境水族館です。

アクアマリンふくしまのメイン水槽「潮目の海」。重なり合う2つの水槽は黒潮と親潮がぶつかり合う福島の海を再現している。
アクアマリンふくしまのメイン水槽「潮目の海」。重なり合う2つの水槽は黒潮と親潮がぶつかり合う福島の海を再現している。
メイン水槽の前には寿司処「潮目の海」がある。水槽を泳ぐ魚を見ながら魚を食べることで、水産資源の大切さを感じることができる。
メイン水槽の前には寿司処「潮目の海」がある。水槽を泳ぐ魚を見ながら魚を食べることで、水産資源の大切さを感じることができる。

飼育種数は800種を超えており、世界で唯一飼育されていているクラカケアザラシをはじめ、新種の深海生物など珍しい生き物も多く飼育されています。

日本の深海に生息する、世界最大のカニ「タカアシガニ」。アクアマリンでは生息環境の再現にもこだわっている。
日本の深海に生息する、世界最大のカニ「タカアシガニ」。アクアマリンでは生息環境の再現にもこだわっている。
1科1属1種である「ギンカガミ」。サルとヒトのような、分類学的に近い生物がいないということであり非常に珍しい生き物。体が傷つきやすいので水族館でもめったに見ることができない。
1科1属1種である「ギンカガミ」。サルとヒトのような、分類学的に近い生物がいないということであり非常に珍しい生き物。体が傷つきやすいので水族館でもめったに見ることができない。
北海道の羅臼周辺の深海に生息する「ラウスブドウエビ」。2015年に新種記載され、日本ではアクアマリンふくしまだけで見ることができる。アクアマリンふくしまではこういった新種や珍しい生き物がたびたび展示される。
北海道の羅臼周辺の深海に生息する「ラウスブドウエビ」。2015年に新種記載され、日本ではアクアマリンふくしまだけで見ることができる。アクアマリンふくしまではこういった新種や珍しい生き物がたびたび展示される。

また水生生物だけでなく、タヌキやアナグマなどの日本の森林で暮らす生き物や、熱帯性植物なども飼育されており、まさに「環境水族館」にふさわしい水族館といえます。

日本の里山で見られる生き物も展示している。写真はホンドタヌキ。
日本の里山で見られる生き物も展示している。写真はホンドタヌキ。
ユーラシアカワウソ。かつて日本にはニホンカワウソが生息していたが乱獲により絶滅してしまった。
ユーラシアカワウソ。かつて日本にはニホンカワウソが生息していたが乱獲により絶滅してしまった。
水槽の周辺に植えられている植物は本物。アクアマリンふくしまには植物担当の飼育員もいて、植物の繁殖も進めている。
水槽の周辺に植えられている植物は本物。アクアマリンふくしまには植物担当の飼育員もいて、植物の繁殖も進めている。

大人も息を呑むほどの美しい展示はもちろん、小さなお子さんも一緒に楽しめる釣りや炭火焼きなどの体験メニューも豊富で、誰でも楽しめる施設になっています。

この写真は2017年に撮影したもの。現在は新型コロナウイルス対策として現在は休止中。
購入した貝類を炭火焼きして食べることもできる。この写真は2017年に撮影したもので、現在は新型コロナウイルス対策のため休止中。

ひれあし類は4種類

アシカ科

・キタオットセイ
・トド

アザラシ科

・クラカケアザラシ
・ゴマフアザラシ
の4種が飼育展示されています。

世界で唯一会えるクラカケアザラシ

一番は何といってもクラカケアザラシです。クラカケアザラシは冬になると流氷に乗って日本周辺までやってくるので、北海道などでは漂着した個体を保護することがあります。ですが飼育はとても難しく、長期飼育ができた事例はほとんどありません。現在では世界でもここだけでしか見ることができない貴重なアザラシになります。

馬に付ける鞍(くら)の形に似た模様があるので、「クラカケアザラシ」と名前がついた。
馬に付ける鞍(くら)の形に似た模様があるので、「クラカケアザラシ」と名前がついた。
陸上では目を閉じて休んでいることが多い。なんとも愛らしい表情、、、。
陸上では目を閉じて休んでいることが多い。なんとも愛らしい表情、、、。

ゴマフアザラシと同じ水槽で見ることができます。日中は陸場で休んでいることが多いので、姿が見えないときは壁の除き窓から探してみてください。

壁の覗き窓から陸場のアザラシを観察できる。
壁の覗き窓から陸場のアザラシを観察できる。

暖かい場所は苦手なため、夏の間は展示をお休みすることがあります。来館される場合は必ず水族館のHPを確認してくださいね。

震災を乗り越えたトドとゴマフアザラシ

トドとゴマフアザラシは、2011年に発生した東日本大震災の際にはすでにアクアマリンふくしまで飼育されていました。当時大きな被害を受けたアクアマリンふくしまでは約20万匹いた飼育生物の9割が亡くなってしまいました。ゴマフアザラシとトドは全国の水族館に避難し、水族館復旧後に戻ってきました。

人より大きなトドを間近に見ることができる。
人より大きなトドを間近に見ることができる。
「海のギャング」と呼ばれているが、よく見るととても穏やかな表情をしている。
「海のギャング」と呼ばれているが、よく見るととても穏やかな表情をしている。

ゴマフアザラシは妊娠している個体もおり、初めての出産、しかも出産直前という状況での避難になってしまいました。ですが、避難先の千葉県・鴨川シーワールドで避難した翌月に無事に赤ちゃんを出産しました。さまざまな困難を乗り越えたゴマフアザラシにもぜひ会いに行ってくださいね。

避難先から戻ったアザラシ達は、アクアマリンふくしまに戻っても繁殖に成功している。
避難先から戻ったアザラシ達は、アクアマリンふくしまに戻っても繁殖に成功している。
2017年に撮影したゴマフアザラシとトドのフィーディングタイムの映像

新メンバーのキタオットセイも必見!

クラカケアザラシやトドが飼育展示されているエリアから離れた「アクアマリンえっぐ」では、2021年からキタオットセイの展示を行っています。

キタオットセイが見られるのは全国でも4施設と、かなり貴重な生き物なのだ。
キタオットセイが見られるのは全国でも4施設と、かなり貴重な生き物なのだ。

キタオットセイはかつてその上質な毛皮を取るために乱獲されたことから、現在は法律によって捕獲が禁止されている種類です。そのため日本の水族館ではかなり展示施設は少なく、かつ水槽越しに近くで見られるというのはとても貴重なのです!

オットセイを見ているとき、オットセイもこちらを見ている。
オットセイを見ているとき、オットセイもこちらを見ている。

アクアマリンふくしまではオス1個体、メス1個体を展示しています。キタオットセイはオス・メスで見た目がかなり違う種類なので、ぜひじっくり観察してみてくださいね。

まとめ

アクアマリンふくしまは4種類のひれあし類を見ることができ、クラカケアザラシやキタオットセイなど貴重な種類にも会える水族館です。ひれあし類以外にも、福島の海をはじめとしたさまざまな生き物を見ることができます。
人と生き物、海の繋がりを楽しみながら学び、体験できるアクアマリンふくしまは日本でも類を見ない水族館で、子どもから大人まで何度行っても楽しむことができます。みなさんもぜひ一度アクアマリンふくしまに遊びに行ってはいかがでしょうか?