今回紹介するのは、『日本の鰭脚類 海に生きるアシカとアザラシ』です。
ISBN:978-4-13-060239-6
出版社:東京大学出版
著者:服部 薫 編
初版出版:2020年7月20日
サイズ:A5 278ページ
定価:6,900円+税
各分野の専門家が自身の研究例を中心に深堀りしている
入手困難な論文も多く引用されている
ひれあし類の国内での管理状況もわかる
各分野の専門家が自身の研究例を中心に深堀りしている
『日本の鰭脚類』はひれあし類だけを取り上げた専門書としては最新の本です(2023年3月現在)。
一番大きな特徴としては、ひれあし類の生態を「狭くても深く」紹介していることです。
まだまだひれあし類はわかっていないことが多いので、すべての種類の生活史を紹介するのは難しいです。そのため、この本では編著者の服部薫さんを含め総勢12名の専門家がご自身の研究例を中心に解説をしています。
現在第一線で活躍されている、本当に豪華な顔ぶれです!
有名な古い論文から最新の知見も紹介されているので、これを読むだけで各分野の全体像が見えてきます。
入手困難な論文も多く引用されている
日本でのひれあし類に関する論文はたくさんありますが、その全てがネット上で見ることはできません。
観察記録とかは卒業論文にしかなってなくて、なかなか手に入らないんですよ、、、。
この本では実際に学生を指導している先生方が書かれているので、入手困難な論文もたくさん引用されています。例えば、上陸場をめぐって競争するゼニガタアザラシの関係性やその時間帯など現地での詳細な観察記録も記載されていました。
国内のひれあし類を知るためには細かい観察記録を見れるのは嬉しいですね!
ひれあし類の国内での管理状況もわかる
日本では過去に毛皮目的などで乱獲されたため、厳重に保護されているひれあし類がいます。逆に漁網を壊したり魚を奪う「漁業被害」が問題視され、駆除されている種もいます。
そのため日本のさまざまな法律でひれあし類は管理されています。
でもひれあし類は種によって関連する法律や行政機関が違うから勉強するのが大変なんです(汗)
この本では保護管理の歴史的な背景から最近の問題までが解説されています。
また現在の管理体制やそれにかかわる研究報告も書かれていますので、ひれあし類とヒトの関わりを知るならぜひおすすめの一冊となっています!
国内のひれあし類は研究が進んでいく途中なので、今のうちに『日本の鰭脚類 海に生きるアシカとアザラシ』を読んで最新の情報を手に入れてみてはいかがでしょうか?