英名 | Ribbon seal |
学名 | Histriophoca fasciata |
分類 | アザラシ科クラカケアザラシ属 |
分布 | オホーツク海、ベーリング海 |
大きさ | オス:150cm, 90kg メス:150cm, 90kg (わずかにオスの方が大きくなる報告もある) |
クラカケアザラシとは?
クラカケアザラシとは、乗馬時に使う道具の鞍掛(くらかけ)に似た模様を持つことが名前の由来になっているアザラシです。
オホーツク海やベーリング海などの太平洋北部の海域に生息しており、流氷に乗って日本周辺で目撃されることがあります。

水族館でおなじみのゴマフアザラシと違い、沿岸で見ることはない種類で、詳しい生態は明らかになっていません。
また現在(2025年2月時点)では国内の水族館・動物園では見ることができないため、まだ全国的にも知られていないアザラシの1種です。
分布・回遊
クラカケアザラシは北太平洋と一部の北極海に生息しています。(2)

基本的に氷上で生活をしており、出産、子育て、換毛は全て海氷上で行います。ゴマフアザラシのように密集することがなく、生涯のほとんどを単独で生活するため、詳しい生態はあまりわかっていません。繁殖期は流氷上で生活をし、1頭の赤ちゃんを3~4週間かけて育てます。(2)(3)

海氷が無くなる5~6月は各海域に分散して暮らします。その時期に誤って南下したコドモや、弱った個体が海岸に漂着することがあります。(4)
ゴマフアザラシも流氷上で生活しますが、ゴマフアザラシは流氷の外側に集まるのに対し、クラカケアザラシは中心部を主に利用しています。また水深で見てもゴマフアザラシは水深が浅い海域(200~500mよりさらに浅い場所)で複数個体が集まって目撃されますが、クラカケアザラシはより深い海域で単独で目撃されます。(3)(5)(6)
食性
詳細な研究結果は多くありませんが、スケトウダラやホッキョクダラなどの魚類やエビ類を捕食しています。(7)

人間との関わり
1970年頃まではオホーツク海や根室海峡で毛皮目的の狩猟が行われていました。(8)(9)
その後毛皮業界が衰退するにしたがって、アザラシの狩猟も行われなくなりました。

クラカケアザラシは普段は外洋で暮らしていますがが、迷ったコドモや衰弱した個体がまれに海岸に打ちあがることがあります。(4)
保護したアザラシを各地の水族館で保護・飼育した事例はいくつかありますが、そのほとんどが長期飼育には至っていません。
死因として腎臓結石や肺炎などがあり(10)(11)、同じような環境で生息するゴマフアザラシと比べて病気になりやすいようです。
今後さらに野生下での生態研究が進んで、飼育技術に反映されていくことを期待します。
クラカケアザラシに会える動物園・水族館
現在クラカケアザラシに会える施設はありません。
【過去に飼育展示していた施設】
・ノシャップ水族館(飼育期間は不明)
・おたる水族館(複数回の飼育事例あり、飼育期間は不明)
・アザラシランド(複数回の飼育事例あり、飼育期間は不明)
・青森県営浅虫水族館(複数回の飼育事例あり、飼育期間は不明)
・アクアマリンふくしま(2015年に北海道で保護されたのち、搬入。2023年まで飼育展示し、成獣まで成長させることに成功。この個体(くらまる)が世界最長の飼育記録)
参考資料
1.King, J. E. (1983). Seals of the World.(Second Edition) Cornell University Press, Ithaca, New York. 240 pp.
2.Boveng, P., & Lowry, L. (2018). Ribbon seal: Histriophoca fasciata. In Encyclopedia of marine mammals. Academic Press. 811-813pp.[Link]
3.Boveng, P.L., Bengtson, J.L., Buckley, T.W., Cameron, M.F., Dahle, S.P., Megrey, B.A., Overland, J.E., Williamson, N.J., (2008). Status Review of the Ribbon Seal (Histriophoca fasciata). NOAA Technical Memorandum NMFS-AFSC-191. U.S. Department of Commerce, 115 pp.[Link]
4.Sakurai, Y., Abe, K., & Naito, Y. (1989). A report on unusual mass occurrences of ribbon seal pups along the northeastern coast of Honshu and Southern Hokkaido, Japan. In Proceedings of the NIPR Symposium on Polar Biology (2). National Institute of Polar Research. 139-145pp.[Link]
5.宇野裕之, 山中正実. (1988). 鰭脚類.大泰司紀之・中川元(編), 知床の動物. 北海道大学出版社, 札幌. 225-248pp.[Link]
6.小林万里, 笹森, 琴絵, & 藤井. (2006). オホーツク海における厳冬期 (2 月) のアザラシ類の流氷利用の特徴 繁殖期 (3-4 月) と比較して. 知床博物館研究報告, 27, 99-106pp.[Link]
7.Frost, K. J., and L. F. Lowry. (1980). Feeding of ribbon seals (Phoca fasciata) in the Bering Sea in spring. Canadian Journal of Zoology 58:1601-1607pp.[Link]
8.吉田主基. (1957). 日本のアザラシ産業の紹介. 遠洋 27: 1-8pp.
9.宇仁義和. (2009). 第 2 次世界大戦後の日本におけるアザラシ産業. Biostory= ビオストーリー: 生き物文化誌: 人と自然の新しい物語『ビオストーリー』 編集委員会 編, 11, 68-80pp.
10.阿部恵一. (2015). 浅虫水族館における鰭脚類の保護例. 勇魚. 63. 27-29pp.
11.”クラカケアザラシのさくらが死亡しました。”. おたる水族館.https://web.archive.org/web/20150401072327/https://otaru-aq.jp/news/news-5777/. 2025年2月5日閲覧. [Link]