作成日:2022/12/23 更新日:2023/11/1

ゴマフアザラシ
英名Largha seal / Spotted seal
学名Phoca largha
分類アザラシ科
ゴマフアザラシ属
分布北太平洋
大きさオス:160cm, 87kg
メス:148cm, 65kg

ゴマフアザラシとは?

ゴマフアザラシは北太平洋に生息する中型のアザラシで、日本の水族館では最も多く飼育されているアザラシでもあります。体にゴマを散らしたような模様があることが、名前の由来にもなっています。主に冬になると日本周辺にも来遊し、北海道では観察クルーズも行われています。その一方ヒトの生活との競合も問題視されるなど、一般的なかわいらしいイメージとは異なった事情も抱えている動物です。

模様は個体ごとに異なるので、野生下では個体識別調査にも使われている。
模様は個体ごとに異なるので、野生下では個体識別調査にも使われている。

分布・回遊

冬の繁殖期と夏の採餌期で生息域を変えており、冬季はベーリング海、オホーツク海、間宮海峡、ピョートル大帝湾,渤海湾に分布しています。また夏季になるとベーリング海やチュクチ海、ビューフォート海、間宮海峡からピョートル大帝海、サハリン、渤海湾、黄海の沿岸付近に分布します。

日本には10~11月に北海道沿岸に来遊し、オホーツク海や間宮海峡を繁殖海域として利用します。また近年では北海道日本海側における来遊個体数の増加や滞在期間の長期化(一部は周年滞在)が確認されています。さらにその集団とは別に、野付湾・風連湖、北方四島などを夏の生息地として利用する集団(夏季集団)も存在しています。

ゴマフアザラシの分布 Jefferson et al. 1993 より引用
ゴマフアザラシの分布
Jefferson et al. 1993 より引用
国内の上陸場 桜井ら編 2013; 小林ら編 2004を参考に作成
国内の上陸場
桜井ら編 2013; 小林ら編 2004を参考に作成

食性

ゴマフアザラシは日和見食性なので、季節、場所的に豊富で捕獲しやすい餌を捕食します。近年の研究ではキュウリウオ科、イカナゴ科、ニシン科、タラ科やイカ、タコなどを摂餌していることが分かっています。

ゴマフアザラシが利用する餌生物一覧 Boveng et al. 2009を基に作成
ゴマフアザラシが利用する餌生物一覧
Boveng et al. 2009を基に作成


餌を食べる際は鋭い歯を使って魚を咥える。 咀嚼はせず丸呑みする。
餌を食べる際は鋭い歯を使って魚を咥える。
咀嚼はせず丸呑みする。

人間との関わり

日本の一部の地域では、身近にアザラシを見ることができます。例えば稚内市ではご当地キャラにも用いられたり、道東では流氷上のアザラシを観察するクルーズが行われるなど、観光資源として愛されています。
また北海道のアイヌ民族は古くからアザラシを捕獲していました。肉は食用として、毛皮は衣服として利用していました。
他にも毛皮をスキー板の裏面に用いるなど、さまざまな形で私たちはアザラシを利用していました。

稚内市のご当地キャラの「出汁ノ介」。ゴマフアザラシとコンブがモチーフになっている。
稚内市のご当地キャラの「出汁ノ介」。ゴマフアザラシとコンブがモチーフになっている。

それに対し人間活動とアザラシの衝突も問題になっています。アザラシの捕食行動で特徴的なのが「トッカリ食い」といい、主に頭だけ食べられたサケのことを言います。「トッカリ」とはアイヌ語でひれあし類のことをいいます。漁網内のサケをトッカリ食いしたり、漁網を壊してしまうなどの「漁業被害」が近年問題になっています。

ゴマフアザラシに会える動物園・水族館

〇北海道
旭川市旭山動物園
札幌市円山動物園
サンピアザ水族館
市立室蘭水族館
ノシャップ寒流水族館
おびひろ動物園
おたる水族館

〇東北
浅虫水族館
仙台うみの杜水族館
男鹿水族館GAO
鶴岡市立加茂水族館
アクアマリンふくしま

〇関東
アクアワールド茨城県大洗水族館
那須動物王国
東武動物公園
鴨川シーワールド
市原ぞうの国
しながわ水族館
マクセル アクアパーク品川
横浜・八景島シーパラダイス
箱根園水族館
新江ノ島水族館

〇北信越
うみがたり 新潟市水族館
マリンピア日本海
魚津水族館
のとじま水族館
いしかわ動物園
越前松島水族館

〇東海
下田海中水族館
伊豆・三津シーパラダイス
あわしまマリンパーク
静岡市日本平動物園
豊橋総合動植物公園
名古屋市東山動植物園
南知多ビーチランド
鳥羽水族館
伊勢シーパラダイス

〇中国
京都水族館
丹後魚っ知水族館
海遊館
神戸市立須磨海浜水族園
神戸どうぶつ王国
姫路セントラルパーク
城崎マリンワールド
アドベンチャーワールド
しまね海洋館アクアス
渋川マリン水族館
みやじマリン宮島水族館
海響館

〇九州
大牟田市動物園
マリンワールド海の中道
大分マリーンパレス水族館うみたまご
いおワールドかごしま水族館

参考資料

・Boveng, P. L., Bengtson, J. L., Buckley, T. W., Cameron, M. F., Dahle, S. P., Kelly, B. P., … & Williamson, N. J. (2009). Status review of the spotted seal (Phoca largha).
・Burns, J. J. (2009). Harbor seal and spotted seal: Phoca vitulina and P. largha. In Encyclopedia of marine mammals (pp. 533-542). Academic Press.
・服部薫 編. (2020). 日本の鰭脚類ー海に生きるアシカとアザラシ.  東京大学出版会,  東京. 269pp.
・Jefferson, T. A., Leatherwood, S., & Webber, M. A. (1993). Marine mammals of the world. Food & Agriculture Org..
・小林万里, 磯野岳臣, 服部薫 編. (2004) 北海道の海生哺乳類管理. 北の海の動物センター, 北海道. 201pp.
・桜井泰憲, 大島慶一郎, 大泰司紀之 編. (2013) オホーツクの生態系とその保全 北海道大学出版, 北海道. 400pp.