作成日:2023/2/17 更新日:2023/2/17
英名 | Steller sea lion |
学名 | Eumetopias jubatus |
分類 | アシカ科 トド属 |
分布 | 北太平洋、ベーリング海、オホーツク海 |
大きさ | オス:3.0m, 1000kg メス:2.2m, 270kg |
トドとは?
トドは北太平洋やベーリング海、オホーツク海に生息する、アシカ科では最大の種になります。その大きな体と恐ろしい顔立ちから「海のギャング」とも呼ばれています。北海道や青森県など一部の地域ではトドによる漁業被害が起きており、海の厄介者としてあつかわれています。しかし実はとても臆病な性格の生き物で、水族館ではそのギャップを生かしたパフォーマンスが披露されることもあります。
分布・回遊
トドは北太平洋やベーリング海、オホーツク海に生息しています。最新の研究ではアラスカのサックリング岬を境に、アラスカーアメリカ西海岸に分布する亜種 (Loughlin’s Steller Sea Lion)とロシアー日本に分布する亜種 (Western Steller Sea Lion)に分けられています。(2)(3)
またトドは保護管理上の区分として、アラスカーアメリカ西海岸の亜種を「東部系群」と呼び、ロシアー日本の亜種を「西部系群」と呼んでいます。さらに西部系群はコマンダー諸島西側を境に「アジア集団」と「中央集団」と呼ぶことがあります。
ロシアー日本に分布する亜種は6~9月にサハリンや千島列島などで繁殖をしたのち、その一部が10月~翌年5月にかけて日本周辺に餌を求めて来遊します。(1)(4)
日本本土で繁殖はしませんが、北海道には中心にいくつかの上陸場が確認されています。たびたび何千頭ものトドが集まっている様子はニュースでも取り上げられています。
エサ
トドは季節や海域によって利用する餌を変えています(日和見的捕食者)。北海道周辺ではマダラ、イカナゴ、タコなどを主に利しています。(5)
人との関わり
現在の北海道や樺太に暮らしていたアイヌ民族は、食用や衣服に利用するためにトドを捕獲していました。(6)
アイヌ民話には「トドのシラミ」という、トドをだまして肉をとるという内容の歌も残っています。アイヌ民族にとってトドは生活を支える非常に重要な生き物だったため、一部の地域ではカムイ(=神様)として大切に扱われていました。
公益財団法人アイヌ民族文化財団のYoutubeで「トドのシラミ」のアニメーションを見ることができます。
また日本に来遊するトドの一部が暮らす千島列島では、1910年代から駆除を目的とした狩猟が行われていました(トドより毛皮の価値が高いキタオットセイが同じ場所で繁殖していましたが、トドによって圧迫されていたためです)。(7)
その後世界大戦がはじまると、足りない軍用皮革を補うためにトドが乱獲され、南千島ではダイナマイトを用いて2万頭以上も捕獲されました。(8)
終戦後毛皮の需要が減少するとともにトドの大規模な捕獲は無くなりました。
近年では北海道を中心に漁業被害(漁網や破壊したり、魚を食い荒らす被害)が報告されるようになり、2013年には被害額が約20億にもなりました。(9)
特に小樽などの日本海側ではトドの大群がたびたび目撃されるようになり、ニュースにも取り上げられるようになりました。
平成26年からは水産庁が公表した「トド管理基本方針」に基づいた漁業被害対策が行われており、破壊困難な強化網の開発やトドの追い払い、駆除などが行われている。駆除については、絶滅のリスクがない範囲内で漁業被害を最小化すること目標に、計画採捕数が設定されています。(10)
現在では年間約600頭が駆除されており、駆除されたトドは缶詰や一部の飲食店で食べることができます。
トドに会える水族館・動物園
〇北海道
・おたる水族館
・室蘭水族館
〇東北
・アクアマリンふくしま
〇関東
・鴨川シーワールド
〇北信越
・新潟市水族館マリンピア日本海
〇東海
・伊豆・三津シーパラダイス
・鳥羽水族館
・伊勢シーパラダイス
〇中国
・城崎マリンワールド
・宮島水族館
・桂浜水族館
〇九州
・大分マリーンパレス水族館うみたまご
参考文献
1.King, J. E. (1983). Seals of the World.(Second Edition) Cornell University Press, Ithaca, New York. 240 pp.
2.Burkanov, V. N., & Loughlin, T. R. (2005). Distribution and abundance of Steller sea lions, Eumetopias jubatus, on the Asian coast, 1720’s-2005.[Link]
3.Phillips, C. D., Bickham, J. W., Patton, J. C., & Gelatt, T. S. (2009). Systematics of Steller sea lions (Eumetopias jubatus): subspecies recognition based on concordance of genetics and morphometrics. Occasional Papers, Museum of Texas Tech University, 283, 1-15.[Link]
4.磯野岳臣、服部薫. (2022). 58 トド 北太平洋沿岸・オホーツク海・ベーリング海. 水産庁、独立行政法人水産総合研究センター編 令和3年度国際漁業資源の現況.[Link]
5.Goto, Y., Wada, A., Hoshino, N., Takashima, T., Mitsuhashi, M., Hattori, K., & Yamamura, O. (2017). Diets of Steller sea lions off the coast of Hokkaido, Japan: An inter‐decadal and geographic comparison. Marine Ecology, 38(6), e12477.[Link]
6.北海道立アイヌ民族文化研究センター (編). (1997). アイヌ文化紹介小冊子 3 食べる. 北海道立アイヌ民族文化研究センター.[Link]
7.宇仁義和. (2006). 第二次世界大戦以前の千島列島での トド Eumetopiasjubatus捕獲記録. 知床博物館研究報告, 27, 47–51.[Link]
8.犬飼哲夫. (1968). トド雑記. 哺乳類科学, 8(2), 2_81-83.[Link]
9.北海道庁.(2022).海獣類による漁業被害状況.[Link]
10.水産庁.(2019).トド管理基本方針.[Link]