アザラシ、アシカ、セイウチの情報を紹介

こんちょ (4ページ目 (4ページ中))

シャチのクラファンからひれあしを見つめる

京都大学野生動物研究センターが行っているクラウドファンディングはご覧になりましたか?


これは北海道の知床・釧路のシャチ調査を拡充するためのプロジェクトで、既に200万円以上(1/20時点)も寄付が集まっています。

シャチは日本各地で目撃例がありますが、その中でも北海道東部(知床など)では300頭以上が生息しているそうです。

道東ではシャチクルーズも行われている。
道東ではシャチクルーズも行われている。

2011年からは東海大学,常磐大学,三重大学,京都大学,北海道大学が中心となって「北海道シャチ研究大学連合(Uni-HORP)」が立ち上がり、各大学の得意分野からシャチの生態について調べています。

わかってきたことの一つとして、北海道で見られるシャチには哺乳類を食べるタイプと魚類を食べるタイプがいることが明らかになっています。

シャチの群れの近くにいたミンククジラ。彼らの餌なのだろうか、、、。
シャチの群れの近くにいたミンククジラ。彼らの餌なのだろうか、、、。

海棲哺乳類を食べるタイプでは、過去には胃の中から大量のアザラシの爪が出てきたそうです(つまりそれぐらい食べている)。みなさんご存知の通り、アザラシの多くの種は流氷に乗って住む場所を変えたり、子育てをしています。餌も流氷から海に溶け出した栄養素で育った魚を利用しています。つまりアザラシはその海の状態を色濃く映し出す鏡のような存在です。そんなひれあし類を利用するシャチもまた海の環境を大きく反映する生き物なのです。

シャチの餌にもなるクラカケアザラシ。自然界では流氷に乗って生活している。
シャチの餌にもなるクラカケアザラシ。自然界では流氷に乗って生活している。

私は海でひれあし類を見る機会が多いのですが、海でひれあし類を見るのは本っっっ当に大変です。寒いし、雨や雪で見えないし、やっと見えても遠くて何してるかわからないし、、、何より潜ってしまってはどうしようもありません。

キタオットセイの群れ。天候に恵まれればゆっくり観察することができる。
キタオットセイの群れ。天候に恵まれればゆっくり観察することができる。
実際はこんな感じに見えることがほとんど。調査どころではなくなってしまう、、、。
実際はこんな感じに見えることがほとんど。調査どころではなくなってしまう、、、。

以前ひれあし類を探しているときにシャチを見たこともあります。あんなに大きな体をしていても、何度も潜ってしまうと数を数えるのもやっとのこと。結局まともな写真が撮れませんでした。

立派な背びれから、かろうじてシャチだとわかる。
立派な背びれから、かろうじてシャチだとわかる。

近くで見てみたいと思い、知床半島の羅臼町で行われているシャチクルーズにも乗ってみたこともあります。10万以上かけて飛行機とレンタカーを乗り継ぎ、やっとこさ船に乗ったのに悪天候で何も見れませんでした、、、。

知床沖から見た歯舞群島の一部。本当ならここでシャチが見れるはずだった。
知床沖から見た歯舞群島の一部。本当ならここでシャチが見れるはずだった。

それぐらい海棲哺乳類を見るのは大変なのです。

最近ではシャチが漁網から魚を盗む「漁業被害」も確認されているそうですが、その詳細はまだわかっていません。トドやゼニガタアザラシなど、ひれあし類の一部の種類でも漁業被害対策の一環として網を強化したり、駆除も行われています。

ですが、シャチは群れによって生態が違うのであれば、その群れや海域ごとで調査をしなければいけません。それはどの群れがやっているのか?どれぐらいの頻度で起こっているのか?これらを調べるためにはどうしても人手や労力、資金が必要になります。今回のクラウドファンディングは新しく調査範囲を拡充するための資金になります。私も少しばかりですが寄付をしましたが、今回のプロジェクトを通じて、シャチや同じ海に生きる生き物たちがこれからも身近な存在であり続けてくれればいいなと思っています。

シャチは捕鯨時代に乱獲され、数が減ってしまったこともある。これからもシャチとともに生きられるよう、彼らの生態を知っていく必要がある。
シャチは捕鯨時代に乱獲され、数が減ってしまったこともある。これからもシャチとともに生きられるよう、彼らの生態を知っていく必要がある。

5000円の「応援コース」もありますし、10000円で各地のコンブやシャチの鳴き声データがもらえる「釧路コース」・「羅臼コース」などさまざまなコースがあるので、ぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか?
このクラウドファンディングは1/31の午後11時までとなっていますので、お忘れなく!

「鳥羽水族館の鰭脚類における受診トレーニングの発展」の紹介

論文の概要

日本野生動物医学会誌にて先日公開された、「鳥羽水族館の鰭脚類における受診トレーニングの発展」を読みました。
概要としては、鳥羽水族館が2006年~2020年に行ってきたひれあし類の受診トレーニングの実施件数が増えてきたこと、それによりひれあし類の健康や繁殖、生態解明に大きく貢献してきた、というものでした。

「受診トレーニング」とは?

そもそも「受診トレーニング」とは何でしょう?
例えば私たちが病院に行って、「血液を取りますよー」と言われたときに何をするでしょうか?
採血をする台の前に座って、袖を捲って、腕を置いて。
さらに血を止めるバンドを巻かれたり、アルコールで拭かれたり、最後には針を刺されたりしても動かずに待つ、、、という一連の流れがありますね。

自身の健康に必要な行為だとわかっていても、ためらってしまいますよね、、、。
自身の健康に必要な行為だとわかっていても、ためらってしまいますよね、、、。


これを動物にやってもらうにはどうすればいいでしょうか?
体が小さい動物なら、抱っこで抑えればできるかもしれません。

どうしようもない時、ペットなら抑えて治療できる、、、かも?
どうしようもない時、ペットなら抑えて治療できる、、、かも?


ではひれあし類はどうでしょうか?

捕まえることはできるでしょうか?
捕まえることはできるでしょうか?

仮に今日だけ無理やり抑えることができても、動物が嫌がって暴れれば動物や人がケガをする可能性もあります。また近年は動物福祉の考えが高まっているので、そういった動物に過剰な負担をかける行為は薦められません。

なので水族館や動物園で飼育している動物では、普段からさまざまなトレーニングを行うことで、自発的に診療に必要な姿勢を維持してもらうようにしています。
こういった診療を受けるための状態を作るトレーニングを「受診トレーニング」といいます。

セイウチ
体を触らしてくれることもトレーニングによってできるようになる。日々の積み重ねが診療だけでなく、解説にも役立ってくる。

鳥羽水族館でのこれまでの取り組み

鳥羽水族館ではこれまでに飼育してきたひれあし類7種、69個体で2653件もの診療を受診トレーニング下で行ったそうです。
診療項目も、採血、超音波検査、X線写真、投薬・注射、細菌検査、眼科検査、麻酔などなど、、、まるで人間の健康ドックのようですね!

これらの診療は、病気の治療以外にもひれあし類の繁殖や定期検査を目的として行ったそうです。
病気の治療の一例としては白内障(眼球内の水晶体が白く濁る病気)の検査や、手術後の点眼などを行ったそうです。

白内障のバイカルアザラシ。
人間でも発症することもあり、発症すると視力が低下していく。人間では日帰り手術もできるようになったが、ひれあし類では治療例は多くない。
白内障のバイカルアザラシ。人間でも発症することもあり、発症すると視力が低下していく。人間では日帰り手術もできるようになったが、ひれあし類では治療例は多くない。

また繁殖については、今までほとんど繁殖がなかったオタリアやミナミアフリカオットセイで胎子の成長を観察することができたそうです。

オタリアにおける腹部超音波画像
*胎嚢と胎子(全長3.33cm)
笠松ら (2022)より引用
オタリアにおける腹部超音波画像
*胎嚢と胎子(全長3.33cm)
笠松ら (2022)より引用

イルカでは胎子の成長速度がかなり調べられていて、胎子の大きさから出産予定日を計算することができます。ですがひれあし類では出産日の予測ができるほどの研究は進んでいないので、今後の繁殖技術の向上も目指すことができますね。

また定期検査を行うことで、見た目にはわからない異常に気付くことができますし、そもそも正常な数値とは、普段から調べてないとわかりません。
水族館の限られた人手の中で定期的に検査をするためには、どうしても動物の協力が欠かせないということです。

オタリア
オタリアやカリフォルニアアシカは飼育頭数が減っている。これからも見られるようにするためには繁殖や健康管理が欠かせない。

まとめ

今回は鳥羽水族館のひれあし類における受診トレーニングがどのように発展してきたかを紹介しました。

水族館で動物が元気なのは当たり前、と思ってしまいそうですが、野生動物であるひれあし類は痛いときに「痛い」とアピールしてくれることはありません。またひれあし類の生態についてはわかっていないことも多いので、トレーナーや獣医が日々観察しながらよりよい飼育展示に向けて努力をされています。

今回の論文を読んで、鳥羽水族館では採血や体温測定など基本的な検診だけでなく、エコーやX線、麻酔などかなり大がかりなものも行われていました。
またそれらの情報がひれあし類の繁殖や健康管理にどのように役立てられているのかを知ることもできました。

水族館・動物園では動物の飼育技術で新しく分かったことを論文にしたり、研究会で発表することもあります。今までうまくいかなかったことを紹介することもあるので、伝え方が難しく、なかなか公表できないこともあります。
そういった状況の中で長年にわたる努力と結果を取りまとめた今回の論文は、ひれあし類飼育技術全体にも大きな影響を与えたと思います。
今回の論文のように誰でも無料で読むことができるというのはあまり多くないのでぜひ皆さんにも読んでいただきたいです!

〇紹介文献
・笠松雅彦, 鈴木智大, 八幡奈緒, & 村松那美. (2022). 鳥羽水族館の鰭脚類における受診トレーニングの発展. 日本野生動物医学会誌27(2), 99-109.

日本最北端(稚内&礼文島)に暮らすゴマフアザラシ

日本最北端へ出発!

今回紹介するのは日本最北端の町、稚内(わっかない)と、日本最北の島、礼文(れぶん)島に生息するゴマフアザラシです。

フィールドマップ

90年代以前は12月~翌年3月頃にこの地域にアザラシが来遊していたそうですが、近年は11月~翌年5頃まで来遊期間が伸びています。また以前は若い個体が多かったのに対し、近年は成獣も多く確認されいるようです。
他にも一部の個体では回遊せずに留まっている個体(周年定着個体)も確認されています。礼文島では出産も確認されているなど、アザラシ達の生活様式が年々変化してきています。

稚内のアザラシ

稚内市内へ移動

稚内には新千歳空港から飛行機か、札幌駅から高速バスで向かうのがおすすめです。

稚内空港内
空港ではゴマフアザラシのはく製がお出迎え

さすが最北端の街なので、「最北端の駅」や「最北端のマクドナルド」など「最北の○○」がたくさんあります。

日本最北端のマクドナルド
訪問の際には記念写真もいかがでしょうか?

抜海港で観察します

アザラシが見られる場所はいくつかありますが、今回は抜海(ばっかい)港の写真を紹介します。抜海港には稚内駅から車で約20分で行くことができます。


到着すると消波ブロックの上にアザラシがゴロゴロと、、、!?

抜海港
対岸にぎっしりとアザラシが並んでいます。


そして第一印象は「デカい。」でした。水族館で見るコロっと丸いアザラシと違い、非常に体格に良いアザラシ達が上陸して休んでいました。

抜海港のアザラシ
こちらの様子をうかがうアザラシ、ヒトが訪れることはあまり気にしてなさそうだった。


上陸する場所に限りがあるため、たびたび闘争もしていました。


ちなみに以前は冬季に観察所が設置されていましたが、2015年からは休止しているそうです。
港は除雪が十分にされてないことが多いので、冬に行かれる方は十天候や安全に気を付けてくださいね。

水族館もおすすめ!

抜海港から車で北に20分ほどの場所には、日本最北端の水族館「わっかりうむ ノシャップ寒流水族館」もあります。


ホッケやソイなどの北方系の海水魚や、「幻の魚」とも呼ばれているイトウなどの北海道ならではの生き物を見ることができます。屋外にある「アザラシ池」ではゴマフアザラシを間近に見ることができ、なんと餌やりもできます。

ノシャップ寒流水族館のゴマフアザラシ
こんな間近にアザラシを見ることができる


ぜひ野生のアザラシを見た後には、水族館にも足を運んでみてはいかがでしょうか?

礼文島へ移動!

礼文島は稚内からハートランドフェリー株式会社が運航するフェリーで1時間55分で行くことができます。

礼文島行のフェリー
大きな船で、中には2等室から特等室までさまざまな部屋が用意されていた。
礼文島入り口
大きな看板がお出迎え。港を出てすぐの場所にはレンタカーショップもある。


夏には高山植物が咲き乱れるので「花の浮島」とも呼ばれていますが、あいにく訪問した時期には花は咲いていませんでした、、、。
半日しか滞在することはできませんでいたが、島の2カ所でアザラシを見ることができました。

礼文島のアザラシ
この日は遠目にしか見れなかったが、茶柱のように浮かぶアザラシが何頭も確認できた。
礼文島のアザラシ
仰向けになり休んでいることも、、、。

人の生活との問題も…?

身近にアザラシが見られる稚内&礼文島はいかがだったでしょうか?
稚内市ではゴマフアザラシがご当地キャラになるなど観光の目玉にもなっています。

出汁ノ介
稚内市ご当地キャラの「出汁ノ介(だしのすけ)」。稚内でとれる利尻昆布が美味しくて、食べ過ぎて体が昆布色になったそうです。ちなみにアザラシは昆布は食べない。



その一方、この地域のゴマフアザラシの個体数は近年増加し、礼文島では一部のゴマフアザラシが周年定着していることから、漁業との競合が問題視されています。
観光の目玉でもあり、漁業の厄介者でもあるゴマフアザラシ。
それでもアザラシ達はヒトの都合とは関係なく、自然の変化に巧みに対応して暮らしています。
「可愛いゴマちゃん」とは違った、非常に微妙なバランスの上にいるアザラシ達の生きざまをぜひ現地で見てみてはいかがでしょうか?

ギャラリー



ヒトの音声コマンドによるトドの音声識別能力の検証

結論:アシカ科では初めての報告、トドはヒトの音声コマンドを識別できる

今回紹介するのは、佐々木ら (2022)の「Human Vocal Commands Verify Audio Discrimination Ability in the Steller Sea Lion Eumetopias jubatus (ヒトの音声コマンドによるトドの音声識別能力の検証)」です。兵庫県にある城崎マリンワールドで飼育展示されているトドの「ハマ」が、トレーナー4人がそれぞれ出した音声コマンド(いわゆるボイスサイン)を識別できていることを科学的に証明しました。

トドの生態はこちらで詳しく紹介!↓

動物にとっての音とは?

さまざまな生き物において、音を使ったコミュニケーションが行われていることはわかっています。海洋生物ではイルカが個体ごとの特徴的な音(シグネチャーホイッスル)で互いの存在を確認します。逆に言えば、音声によるコミュニケーションを行うためにはその音を識別する必要があります。

ハンドウイルカ

音の識別は種を超えても可能であることが分かっていて、チンパンジーやハイイロインコなどではその種固有の音響信号以外の音を識別することができます。

ひれあし類にとっての音

ひれあし類ではさまざまな種類の鳴音を使って種内でコミュニケーションをとります。例えば母獣が鳴音で自分のコドモを見分けたりしています。

アザラシではヒトの声を模倣したり、セイウチでは10種のヒトの音声コマンドを識別するなど、種を超えた音響信号の識別ができることが証明されています。

セイウチ


トドも威嚇や求愛の時、母子間で音響信号を使っていることが分かっています。つまりアシカ科であるトドでもヒトの声を識別できる可能性があります。

城崎マリンワールドの「ハマ」の能力

2009年にアクアマリンふくしまで生まれ、その後城崎マリンワールドにやってきたメスのトドの「ハマ」。2014年からすでにボイスサインを使ったトレーニングを実施していたそうです。


※多くの水族館では種目の合図(サイン)をトレーナーの手や体の動きで出しています。これをハンドサインと呼んでいます。

ハンドサインに合わせて前肢を振るオットセイ
ハンドサインに合わせて前肢を振るオットセイ


ですが普段はトレーナーがハマの近くにいるので、唇の動きなど視覚刺激も判断材料として使っている可能性があります。本研究では4人のトレーナーがハマの視覚外で出す音声コマンドとスピーカーから出された音声コマンドの2種類の音響刺激を用いて、ハマが識別できるかを調べました。

実験に参加した城崎マリンワールドのハマ
実験に参加した城崎マリンワールドのハマ
佐々木氏より提供

方法:生声と録音声で実験

実験1:隠れてボイスサインを出す

ボイスサインを出すトレーナーは、ハマから見えないところから10種類のサインをランダムに出しました。
10種類の種目は、
・イヤイヤ(首を左右に振り続ける)
・オーケー(首を上下に頷き続ける)
・おまわり(時計回りに一回転)
・けいれい(右前肢を鼻に当てる)
・ゴロン(転がり回る)
・チンチロリン(両後肢を振り続ける)
・なげキッス(左前肢を鼻に当て、払う)
・バイバイ(左前肢を振り続ける)
・ハマ(1回吠える)
・フセ(地面に伏せる)
です。それぞれの種目はYoutubeで確認することができます。

男性2名・女性2名のトレーナーがサインを出して、種目ごと&トレーナーごとでのサインに対する正解率を調べました。

実験2:録音したボイスサインを流す

生声ではなく、スピーカーからでる録音音声でも識別できるのかを調べました。実験1と同じトレーナー4名によるボイスサインを事前に録音し、ハマに聞かせました。種目ごと&トレーナーごとでのサインに対する正解率を調べました。

結果:種目やトレーナー間で違いがあるものの、音声刺激を弁別できた!

実験1(隠れたトレーナーからボイスサイン)では、すべてのサインで正解率が高くなりました。つまりハマは音声刺激を区別して、それを特定の行動と関連づけることができているといえます。
また実験2(スピーカーから出るボイスサイン)では「ごろん」以外は正答率が高くなりました。特に「投げキッス」「バイバイ」」「ハマ」の正答率は他のサインより高くなりました。正解率が高いサインは全てが「a」の母音の単語から始まっていたので、ハマが聞き取りやすかったのだと考えられます。

トレーナーによる正解率の違いは、実験2の一部のサインで男性トレーナーの方が正解率が低くなりました。他の人より低いトーンで発声していたのが理由と考えられますが、今回はトレーナー同士の音声の細かい違いまでは調べていなかったそうです。今後のさらなる研究に期待されます。

まとめ:トドは音を使って複雑なコミュニケーションをする可能性も!

過去の研究でセイウチやアザラシなど、他のひれあし類で音を認識できていることが分かっています。今回の研究を通してトドのハマが音声刺激のみで特定の行動を起こすことができたということは、野生下でもトドが音使って行動を変える、つまりコミュニケーションができていることが示されました。今回はハマ1頭での事例報告でしたが、城崎マリンワールドでは他のトドにもボイスサインでトレーニングを行っているそうなので、今後の新しい情報にも注目していきたいです。

城崎マリンワールドのハマ
城崎マリンワールドのハマ
佐々木氏より提供


城崎マリンワールドのHPはこちら


〇紹介文献
Sasaki, M., Chiba, M., Ito, E., Tsutsumi, K., Ito, K., & Sunobe, T. (2022). Human Vocal Commands Verify Audio Discrimination Ability in the Steller Sea Lion Eumetopias jubatus. International Journal of Comparative Psychology, 35. Retrieved from https://escholarship.org/uc/item/5fs4b6ht


※アイキャッチ画像および本文内の一部画像は、佐々木雅大さまにご協力いただきました。心よりお礼申し上げます。

【鳥羽水族館】日本一の○○水族館!? (~2022年版)

飼育種数日本一の水族館

今回紹介するのは三重県鳥羽市にある鳥羽水族館です。
初訪問は水族館で働きたくて全国の施設を周り始めたころ。最初のひれあし施設紹介をするなら自分の原点になった鳥羽水族館だな、、、と思い、今までに訪問したときの情報をまとめて紹介します。

水族館好きの方はすでにご存じの通り、鳥羽水族館は「飼育種数日本一」をキャッチフレーズに約1200種もの生き物を飼育展示している日本を代表する水族館です。
大型な水槽があって、たくさん生き物がいそうな美ら海水族館でも飼育種数は約680種です。飼育種数だけで水族館を比較するのは難しいのですが、それぞれの生き物を飼育・展示する労力を考えると鳥羽水族館のすごさが伝わるのではないでしょうか。

ひれあし類は8種類もいる

アシカ科

・ミナミアフリカオットセイ
・オタリア
・トド
・カリフォルニアアシカ

アザラシ科

・ゴマフアザラシ
・ハイイロアザラシ
・バイカルアザラシ

セイウチ科

・セイウチ
 の8種が飼育展示されています。

展示エリアはかなり広い

ひれあし類がいるのは
・パフォーマンススタジアム
・海獣の王国
・極地の海
・水の回廊
 の4か所です

パフォーマンススタジアム

まずはパフォーマンススタジアムから!こちらでは1日4回アシカショーが行われており、カリフォルニアアシカとオタリアとミナミアフリカオットセイを見ることができます。

トレーナーの面白くも暖かいトークとアシカの軽快な動きには舌を巻くこと間違いなし。
動画をとればいいのか写真を撮ればいいのかいつも悩まされます、、、(笑)
どの種・個体が見られるかはその時次第ですので、訪問時間に余裕をもって何回も見るのがおすすめです。

海獣の王国

続いては海獣の王国。
トドやカリフォルニアアシカ、ハイイロアザラシの3種を見ることができます。
ここはもともと南米の海岸を再現したエリアで、オタリアも展示されていたようです。展示エリアの中央には巨大な岩があったのですが、2017年にトドが壊してしまったそうです。その後リニューアルを得て現在の巨大な透明トンネルができました。
こちらでは1日2回のお食事タイムが行われており、巨大なトドを間近に見ることもできます。

カリフォルニアアシカ


個人的には飼育園館が非常に少ないハイイロアザラシを間近に見ることができるので、ぜひ見ていただきたい!「アザラシといえばゴマちゃんでしょ♪」と思っている人はハイイロアザラシの顔を見て衝撃を受けるでしょう。

ハイイロアザラシ

新手のモンスターにも見える外見ですが、よく見るととても穏やかな表情を見せてくれます。
プールに日光が差し込んだときは、ぜひ下の階の水中観覧に足を運んでいただきたい。
美しい水中に突如現れる巨大な海獣たちの動きには毎度息を呑みます。

海獣王国内


その奥にある「マリンギャラリー」ではセイウチの骨格を含め様々な標本が展示されているのでそこも見てほしいです、、、。

マリンギャラリー

極地の海

極地の海ではバイカルアザラシを見ることができます。

バイカルアザラシ

同じエリアに大人気のラッコがいることもあり、比較的空いていることが多いのでのんびり観察することができます。2022/2/22に誕生した「ニコ」もこちらで見ることができます。

水の回廊

水の回廊ではゴマフアザラシ、ミナミアフリカオットセイ、セイウチを見ることができます。
ミナミアフリカオットセイはアシカショーでも見ることができますが、こちらでも見ることができます。
以前訪問した時は観覧側で行われたトレーニングを見ることができました。

ミナミアフリカオットセイ

そして水の回廊では1日2回のセイウチふれあいタイム(現在はコロナ対策で解説のみ)も実施しています。
初めて鳥羽水族館に行ったときは「セイウチ笑(ショー)」というプログラム名でセイウチとトレーナーの絶妙な掛け合いとパフォーマンスを披露していました。次々と起こる笑いの渦!私もセイウチの腹筋や笑い声、口笛を吹いたりと様々な動きを見せる中で、こんなにセイウチってこんなに器用なのか!?と学生の私はただひたすら笑いと感動で満たされていました。

セイウチ

この数年はセイウチの繁殖に力を入れていて、2016年、2018年、2020年には赤ちゃんも誕生しています。残念ながら生まれた個体は死亡し、出産した母親の「クウ」も2022年に死亡してしまいました。残念な結果がではありましたが2018年生まれの個体は数日生存、2020年に生まれた個体は人工哺育で1年以上生存するなど少しずつ前に進んでいます。
全国的にもセイウチの繁殖は課題が多いので、これからの活動にも期待しています。

公式HPの「飼育日記」は必読!!

HP内の「飼育日記」では飼育員目線の発見や写真がほぼ毎日投稿されています。ユーモラスな話の中に生き物の飼育を通じで分かった情報が盛り込まれています。
近年は水族館動物園の情報発信のあり方が厳しくなっている中、貴重な情報を伝えることはぜひこれからも続けていただきたいし、応援したいですね!

ごあいさつ

はじめまして、こんちょと申します。

まだ始めたばかりの当サイトをご覧いただき本当にありがとうございます。

初めての投稿なので、まずはご挨拶を兼ねた自己紹介を、、、。

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